PoEハブで給電できる距離はどのくらい?距離を延長する方法も解説

ネットワークカメラなどの設置場所に電源がない場合でも、PoEハブを使えば給電が可能で非常に便利です。給電可能な距離は最長で100mですが、距離がギリギリの場合、機器が本当にきちんと動作するのだろうかと心配になることもあるのではないでしょうか。

そこで今回は、PoEハブで実際に給電できる距離や、給電可能な距離を延長する方法などを解説します。機器までの距離が長い場合のPoEハブやLANケーブルの選び方などもお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。

PoEハブで給電可能な距離は最大100m

PoEハブで給電可能な距離は最大100mです。PoEはLANケーブルを利用して電力を供給する仕組みですが、LANケーブルの規格であるイーサネット規格の最長伝送距離が100mのため、PoEで給電可能な距離も規格上は同様となっています。

ただし、給電可能な距離は「最長で」100mであることに注意が必要です。のちほど詳しく説明しますが、LANケーブルの芯線となる銅線には単線を使ったものと、より線を使ったものがあります。単線を使った場合の伝送距離は100mですが、より線を使った場合はノイズの影響を受けやすくなるため、給電可能な距離が短くなり60~70m程度になるとされています。

ほかにも、銅線の太さや銅の純度などの影響でLANケーブルの品質が悪いと、給電可能な距離が短くなる可能性があります。給電しなければならない距離が長い場合には、品質の高いLANケーブルを使用する必要があるでしょう。

PoEハブの給電距離を延長するには

PoEハブ(PoE対応機器)で給電可能な距離は最大100mですが、延長する方法もあります。ここでは、延長方法を2つ紹介します。

◇PoEパススルーを使う

PoEハブの給電距離を延長する1つ目の方法は、中継機にPoEパススルー(PoEパススルー対応機器)を使うことです。PoEパススルーでは、ほかのPoEハブから受け取った電力を中継します。中継機の設置場所に電源を用意しなくて良いのがメリットです。

PoEパススルーはメーカーや商品によって「PoEエクステンダー」「PoE延長器」「PoEリピーター」などと呼ばれることもあります。

PoEパススルーは1つだけでなく、2つ以上で中継する多段接続も可能です。ただし、PoEパススルーでは、受け取った電力よりも供給可能な電力は少なくなります。つまり、接続する段数を増やすほど、供給電力が少なくなるため注意が必要です。

監視カメラなどの装置を動作させるためには、必要な電力が供給されるように供給元の電力を確認しておく必要があります。必要な電力についてはのちほど詳しく説明します。

◇PoEハブやPoEインジェクターを増やす

給電距離を延長する2つ目の方法は、PoEハブやPoEインジェクターを増設することです。既存のPoEハブ(またはPoE対応スイッチングハブ)と接続デバイスとの間に、PoEハブやPoEインジェクターを設置すれば、給電距離を延長できます。

ただし、この方法の場合には、PoEハブやPoEインジェクターを増設した場所に電源が必要です。また、この方法では製品によって延長距離が異なります。PoEハブであれば給電距離を最長100mまで延長可能です。PoEインジェクターは給電機器(PoEハブ)から接続デバイスまでの間に設置し、両端の距離が最長100mまで延長できる製品があります。これらを導入の際は延長可能な距離をよく確認しておく必要があるでしょう。

PoEとは

PoEとはどのようなものなのか、ここでおさらいをしておきましょう。PoE(ピーオーイー)とは「Power over Ethernet」の略で、LANケーブル1本で通信と電力を供給する技術です。PoEが開発される以前、LANケーブルで接続したデバイスは、LANケーブルだけでなく電源ケーブルにより電力を確保する必要がありました。

しかし、PoEの実現により電源の供給も可能になると、接続デバイスの電源ケーブルが不要になります。電源の確保が難しい屋外や天井などのような場所でも、手軽に防犯カメラなどを設置できるようになりました。

ただし、PoEを利用するには、接続デバイスもPoEに対応している必要があります。また、スイッチングハブもPoEに対応させるか、スイッチングハブと接続デバイスとの間にPoEインジェクターを挿入しなければなりません。

距離が長い場合におけるPoEハブの選び方

PoEハブと接続デバイスとの距離が長い場合、どのようなことに気を付ければ良いのでしょうか。ここでは、押さえるべきポイントを3点紹介します。

◇PoEの代表的な3つの規格

PoEには3つの代表的な規格があります。PoE(IEEE802.3af)、PoE+(IEEE802.3at)、PoE++(IEEE802.3bt)です。給電可能な距離はどれも同じく最長100mですが、最大供給電力が異なります。PoE(IEEE802.3af)は低消費電力デバイスしか対応できませんが、PoE++(IEEE802.3bt)であれば高消費電力デバイスにも対応しています。PoE+(IEEE802.3at)はその中間にあたります。

それぞれの規格の違いを表にまとめましたので、参考にしてください。

PoE(IEEE802.3af)PoE+(IEEE802.3at)PoE++(IEEE802.3bt)
最大供給電力(W)15.43060(タイプ3)
90(タイプ4)
必要なLANケーブルカテゴリ3以上カテゴリ5e以上カテゴリ5e以上
使用可能なデバイスIP電話、生体認証装置などPTZカメラ、カードリーダーなどPOS端末、パソコン、高解像度モニターなど

これらの規格以外にも、シスコが開発したUPoEやHDBaseT AllianceによるPoHなどの規格も存在しています。

◇必要な給電能力とは?

PoEに必要な電力は次の式で求められます。

必要な給電能力=各デバイスの消費電力の合計+LANケーブルの電力ロス

このほかに、1ポートあたりの給電能力が接続デバイスよりも大きいことが必要です。電力が不足すると、デバイスが正常に動作しなくなる可能性があります。

また、供給電力が高いとPoEハブの発熱も増えます。使用環境に合った給電能力のPoEハブを選ぶほか、機器本体が放熱効率の良い材質でできたものを選んだり、設置場所の温度管理を行なったりするなどの工夫が必要です。

◇規格や供給電力を考慮してPoEハブを選ぶ

PoEハブを選ぶ際は、これまで説明したようにPoEの規格や給電能力の検討をする必要があります。具体的には、以下の3点を検討しましょう。

  • ポート数は足りているか
  • 最大供給電力は十分か
  • 1ポートあたりの供給電力は十分か

まず、当然ですが接続デバイスの数だけポート数が必要です。次に最大供給電力は、先ほども説明したように「各デバイスの消費電力の合計+LANケーブルの電力ロス」から計算できます。必要な電力を満たせる規格のPoEハブを選びましょう。また、最大供給電力が十分でも、1つのポートに消費電力の高いデバイスが接続されていると電力不足になる可能性があります。1ポートあたりの供給電力も確認しておきましょう。

給電距離を伸ばすにはLANケーブルも大切

PoEで給電する距離が長くなると、LANケーブルの電力ロスを抑える工夫も大切になってきます。給電距離を伸ばすためのLANケーブルの選び方を説明します。

◇LANケーブルのおもな種類

LANケーブルのおもな種類を簡単に説明します。LANケーブルはカテゴリによって性能が分けられており、現在おもに使われているのはカテゴリ5eからカテゴリ8です。

また、LANケーブルはカテゴリだけでなく構造などによる違いもあります。例えば、芯線の違いです。LANケーブルの内部は8本の芯線で構成されており、芯線は7本の細い銅線をより合わせて作られたより線と、1本の銅線から作られた単線の2種類があります。より線は細い銅線から作られているため、やわらかく取り回しやすいですが、単線は硬くて取り回しにくいのが特徴です。

その代わり、単線のほうが電気信号を通しやすく、より線は電気信号を通しにくいという違いもあります。用途に合わせて単線とより線を選ぶ必要があるでしょう。

◇PoEに適したLANケーブルは?

それではPoEに適したLANケーブルはどのようなものなのでしょうか。まずカテゴリですが、PoEではカテゴリ3以上、PoE+とPoE++ではカテゴリ5e以上のケーブルを使用することが求められています。

現在市販されているLANケーブルの多くはカテゴリ5e以上ですが、使い古しのケーブルなどを使う際には、カテゴリを確認しておきましょう。カテゴリはケーブルにカテゴリ名や配線規格名として印字されています。

電力ロスを抑えるためには、電気を通しやすい単線を用いたLANケーブルがおすすめです。また単線を使っている場合でも、粗悪なケーブルや古いケーブルでは電気抵抗が高い場合があり、給電可能な距離が短くなる可能性があります。

さらに、PoEの性能を引き出すにはケーブルで発生する熱を逃がすことも大切です。PoEではPoEハブだけでなくLANケーブルも発熱します。ケーブルの温度が上昇すると抵抗値が高くなり、伝送可能な距離が短くなります。

放熱効率が良く、電気を通しやすい高品質なケーブルとなると、定評のあるメーカーのLANケーブルを選ぶことがおすすめです。

まとめ

PoEで電力を供給できる距離は最長100mですが、使用するLANケーブルなどによってはそれよりも距離が短くなります。信頼性の高いLANケーブルを選ぶことが必要です。

給電距離は、PoEパススルーやPoEインジェクターなどを使えばさらなる延長も可能です。ただし、距離が長くなる場合はケーブルでの電力ロスも発生するため、必要な給電能力を計算したうえで、供給電力が十分なPoEハブを選ぶ必要があります。

アイマーキュリーのスイッチングハブにPoEパススルー機能はありませんが、各ポートの最大供給電力は30Wに対応しており、高電力消費デバイスでも安心して使えます。また、小型でかつファンレスであるにも関わらず、高い放熱性能を有している点も特徴です。

アイマーキュリーのPoEハブであれば電力供給源のスイッチングハブとして、安心して使用できるでしょう。興味をもたれた方は、ぜひ以下の商品ページから詳細をご覧ください。