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マルチギガビットイーサネットとは?仕組みや生まれた背景をわかりやすく解説!

近年、無線LANではWi-Fi 5として知られるIEEE802.11acからIEEE802.11ax(Wi-Fi 6)へと移行しつつあります。また、携帯電話回線も5Gの普及が進んでおり、無線通信の高速化が著しい状況です。

しかし、有線LANの主流は現在も1Gbpsの1000BASE-Tで、より高速に通信できるマルチギガビットイーサネットが注目されています。

今回はマルチギガビットイーサネットの仕組みや生まれた背景、さらに上位規格である10GBASE-Tなどについて解説します。

マルチギガビットイーサネットとは?

まず、マルチギガビットイーサネットの概要や生まれた背景などを説明します。

◇マルチギガビットイーサネットの概要

マルチギガビットイーサネット(Multi-gigabit Ethernet)とは、通信速度が2.5Gbpsまたは5Gbpsで有線LAN(Local Area Network)に接続できる仕組みで、IEEE802.3bzで2.5GBASE-T、5GBASE-Tとして規格化されています。通信速度が1Gbpsの1000BASE-Tと10Gbpsの10GBASE-Tの中間にあたる規格で、「NBASE-T」とも呼ばれています。

最大の特徴は、既存の有線LAN環境のままで1Gbpsを超える速度を出せるようになることです。通信速度が1Gbpsでは物足りないものの、10Gbpsは導入費用が高くて手が出せないという場合に適した規格でしょう。

◇マルチギガビットイーサネットが生まれた背景とは

マルチギガビットイーサネットが生まれた背景には、無線規格の通信速度向上が関係しています。例えば、Wi-Fi 5として知られるIEEE802.11acの通信速度は最大6.93Gbps、Wi-Fi 6にあたるIEEE802.11axは9.6Gbps、携帯電話の新しい規格である5Gの最高速度は10Gbpsです。

しかし、有線LANは、いまだに通信速度が1Gbpsの1000BASE-Tが主流です。そのため、無線で通信速度を向上しても、有線が使われている区間がボトルネックとなり、通信速度が頭打ちになっています。

それならば1000BASE-Tの上位規格で、通信速度が10Gbpsの10GBASE-Tを導入すれば良いのでは?と思われるかもしれません。しかし、10GBASE-Tでは、今まで多く使われていたカテゴリ5eのLANケーブルが使用できず、最低でもカテゴリ6以上のケーブルが必要です。そのため、10GBASE-Tは導入コストが高く普及が進んでいません。

そこで、1000BASE-Tと10GBASE-Tの中間にあたる通信速度をより安価に実現するために生まれたのがマルチギガビットイーサネットです。マルチギガビットイーサネットでは、カテゴリ5eのケーブルでも1Gbps以上の通信速度を出せることから普及が進んでいます。

◇規格ごとに対応可能なケーブルと接続距離

1000BASE-T、マルチギガビットイーサネット(2.5GBASE-T/5GBASE-T)、10GBASE-Tに対応可能なケーブルと接続距離をまとめておきましょう。

カテゴリ5eカテゴリ6カテゴリ6A
1000BASE-T
2.5GBASE-T/5GBASE-T(マルチギガビットイーサネット)
10GBASE-T×△(接続距離は55mまで)

※「○」は接続距離が100メートルまで対応可能であることを示す。

有線LANでは、ケーブルの最大長は100メートルです。10GBASE-Tにカテゴリ6のケーブルを使うと、距離が55メートルまでに制限されます。10GBASE-Tをフルに活かすには、カテゴリ6A以上のケーブルが必要です。

マルチギガビットイーサネット導入のメリット

マルチギガビットイーサネットを導入する2つのメリットを紹介します。

◇導入時のコストが抑えられる

マルチギガビットイーサネットは、導入時のコストが抑えられます。先述したように、カテゴリ5eのケーブルでも、有線LANの最大長である100メートルまで接続できます。既存の環境でカテゴリ5eのケーブルが使われていた場合でも、新たなケーブルに交換することなく導入可能です。

◇手軽にネットワーク環境を改善できる

すでに有線LAN環境がある場合、10GBASE-Tに更新しようとすると、床下や天井などに張り巡らされたLANケーブルを交換する必要があります。しかし、マルチギガビットイーサネットであれば、既存のケーブルがカテゴリ5e以上であればそのまま利用できます

10ギガビットイーサネットについて

ここまでマルチギガビットイーサネットについて解説してきましたが、上位規格である10ギガビットイーサネットについても説明します。

◇10ギガビットイーサネットとは?

10ギガビットイーサネット(10GbE)とは、10Gbpsで通信可能なネットワーク規格です。1Gbpsのギガビットイーサネット(GbE)の10倍の通信速度を誇ります。10GbEはGbEの上位規格として開発されたもので、10GBASE-Tは10GbEのうち、LANケーブルを用いた規格を指します。1000BASE-Tについても同様にGbEのLANケーブル規格です。

10GbEが最初に規格化されたのは2002年6月のIEEE802.3aeです。しかし、当初は光ファイバーの使用が前提で、LANケーブルは規格化されていませんでした。その後、2006年にIEEE802.3an(10GBASE-T)としてLANケーブルでも最大100メートルの距離を接続できるようになっています。

10GbEは、LANだけでなくMAN(Metropolitan Area Network/LANとWANの中間規模にあたるネットワーク)、WAN(Wide Area Network/広域ネットワーク)、データセンター(通信事業者)間のバックボーン回線などにも用いられています。10GbEは40km以上の接続も可能な規格が含まれているなど、WANなど長距離での利用を前提として規格が定められており、これはイーサネットでは初めてのことです。

当初は光ファイバーのみに対応していたことや、対応機器の価格が高く導入は進みませんでした。しかし、時間の経過とともにLANケーブルに対応するとともに、対応機器の価格も落ち着いてきたため、10GBASE-Tへの変更を検討する企業も増えつつあります。

◇10ギガビットイーサネット導入に必要なもの

10ギガビットイーサネット(10GBASE-T)を導入するには、規格に対応した機器が必要です。それぞれについて詳しく説明します。

・LANカード

LANカードとは、コンピュータのマザーボード上にあるスロットへ装着することで、LANへの接続機能を追加するためのものです。LANカードはクライアント側のパソコンだけでなく、サーバー側にも必要で、PCIe(PCI Express)と呼ばれる規格が使われています。

PCIeは、世代(Gen)により実効速度が異なるほか、レーン(一対の接続端子によって構成される基本的な伝送路)の数が増えるほど速度が上がります。「PCIe x4(4レーン)」「PCIe x16(16レーン)」のように表されているのが、レーン数です。

現在LANカードでおもに使われている第1世代(Gen1)から第3世代(Gen3)の1レーンあたりの実効速度と、10GBASE-Tの導入に必要なレーン数は以下のとおりです。

Gen1Gen2Gen3
1レーンあたりの実効速度2Gbps4Gbps8Gbps
必要レーン数5レーン以上3レーン以上2レーン以上

10GBASE-Tの通信速度に対応するには、世代とレーン数が適切なものを選ぶ必要があります。現在の主流は、Gen2で4レーンのものです。ただし、パソコンによってはPCIeのスロットが限られており、希望するレーン数のLANカードを装着できないこともあるため、導入を検討している場合はあらかじめマザーボードのスロットを確認しておきましょう。

・LANケーブル

10GBASE-Tに必要なLANケーブルについては、先述したようにカテゴリ6以上が必要です。ただし、カテゴリ6の場合は接続距離が55メートルまでになるため、さらにそのうえのカテゴリ6A、カテゴリ7が適しているでしょう。

カテゴリ6Aとカテゴリ7の大きな違いは、カテゴリ7にはシールド加工がされたSTPケーブルと呼ばれるものであることです。10GBASE-Tはノイズの影響を受けやすく、ノイズによって通信エラーが発生するおそれがあり、シールド加工によりノイズの影響を軽減できます。そのため、カテゴリ7のケーブルは価格が高くなりますが、通信品質は安定するでしょう。

ただし、シールド加工された分、シールドされていないケーブルよりも太いほか、ケーブルが硬いため、取り回ししにくいというデメリットもあります。ほかにも、適切にアースが取れていなければ、ケーブル内に電気が溜まってノイズが発生します。手軽に扱うという点では、カテゴリ6Aのケーブルのほうがおすすめです。

・スイッチングハブ

ネットワークに有線接続する機器が複数になると、スイッチングハブが必要です。これまで10GBASE-Tに対応したスイッチングハブは、業務用のものが多く高価でしたが、最近では安価な製品も販売されるようになっています。

10GBASE-Tに対応したスイッチングハブのなかには、マルチギガビットイーサネットにも対応したものもあります。このような製品を選択すれば、今すぐに10GBASE-Tに更新できない場合でも、マルチギガビットイーサネットの利用により通信速度を向上させることが可能です。将来的に10GBASE-Tに更新する際にも、あらためて対応スイッチングハブを購入しなくて済む点がメリットです。

◇今後需要は拡大していくと予想される

これまで10GbEは、導入コストが高く消費電力も多いことなどから、データセンターや大企業のネットワークなど、限られた業務でしか使われていませんでした。

しかし、半導体プロセスの微細化により、従来よりも安い製品が製造されるようになり、導入コストが下がりました。また、当初は光ファイバーが主流でしたが、10GBASE-TによりLANケーブルも使えるようになったことから、導入のハードルが低くなっています。このように大企業だけでなく中小企業や個人でも導入しやすい環境になりつつあり、1000BASE-Tの10倍の速度を出せる10GBASE-Tの需要が増しています。

今後も、さらにデータの大容量化、通信速度の高速化は進んでいくと予想されることから、さらに需要は拡大していくでしょう。

まとめ

マルチギガビットイーサネットは、現在主流の1000BASE-Tとその上位規格である10GBASE-Tの中間にあたる規格で、2.5Gbpsまたは5Gbpsの通信速度を出すことが可能です。導入コストなどの関係で10GBASE-Tの導入を躊躇していた場合でも、マルチギガビットイーサネットならカテゴリ5eのケーブルが使えるため、容易に導入できます。

今後もますますデータの大容量化や高速化は進んでいくことから、将来的には10GBASE-Tの導入も視野に入れなければならないでしょう。マルチギガビットイーサネットは、それまでのつなぎの規格としても優れています。10GBASE-Tの導入も考えつつ、当面はマルチギガビットイーサネットを導入してみることもおすすめです。

「令和2年度第3次補正 事業再構築補助金により作成」

 

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